一児の母・双葉は、銭湯を営む夫が1年前に蒸発してから、女手一つで娘・安澄を育てていた。
銭湯は休業中のためパートで家計を支えるさなか、眩暈と味覚障害から、末期のがんだと宣告される。
余命はもって2,3ヶ月・・・残された時間、双葉は一体何をするのかっていうのがこの映画の中心にある。
双葉が残された時間にした事は、まず『夫の居場所を突き止める』ことと『銭湯を再開させる』こと。
この夫、結婚1回して離婚して、2回目が双葉とで、それ以外に夜遊びで隠し子がいた(疑惑)というクズ。
でも両親を早くに亡くし高校中退して家業の風呂屋を継いだんだから、昔は頑張りものだったのかもね。
その昔の夜遊びが原因でお店の女に迫られ、責任を感じて1年前からその女のところにいたらしい。
でも実際は自分の血を分けた子といわれている小学生の鮎子を2人で暮らしていたみたい。
鮎子は鮎子で、母がいつまでも帰ってこなくて、1年後にまた迎えに来るからという言葉を信じて、双葉たちに引き取られてからも健気に信じて待っていた。
子供は悪くないんや・・・悪いのは屑な大人やで・・・!!
娘の安澄は外ではおとなしいが双葉に鍛えられ、強い子になった。
学校でいじめられても、双葉は頑なに学校に行かせようとし、制服を自力で取り返すまでに。
夫が銭湯に戻ってきて営業再開できて、鮎子が双葉たちになじんできた頃、双葉は『旅行に行きたい』という。
これが3つ目のやりたいことかな。
そこで「何もかも話す」という双葉。
きっと、自分の余命のことを話すのかなと思った。
タカアシガニを食べに行く名目で、夫抜きの女子3人旅へ。
途中で怪しいヒッチハイカー(松阪桃李)に出会い、彼の家族関係も複雑なことが判明。
まだ20代と若いのに、目的もなくただ飄々と、なんとなくという理由で旅を続けようとする彼に、双葉は目標を与える。
見ず知らずの怪しい若者にも優しく接する双葉のおかげで、ヒッチハイカーの心も明るくなったようだった。
でも、そのカニのお店は、毎年家に蟹を送ってくる女性の働く店だった。
その女性はなんと安澄の実の母親だった。
20歳に満たない年齢で産んだものの、耐えきれなくなって捨ててしまったという。
『安澄の本当の母親に合わせる』というのが目的にあったのね・・・。
安澄の実の母は聾唖者だった。
いざという時の為にと、手話をちゃんと教えてあげていた。
双葉に子供は居なかった。
どんな思いで今の夫と結婚して、子供の面倒を見ようと思ったのだろう。
双葉もまた、母親に捨てられた子供であった。
途中、女性が女の子をまた会いにくるからね、と置いていくシーンがあるんだけど、これはてっきり鮎子の回想シーンかと思ったら双葉の過去のことだった。
しましまあ、自分に真剣に向き合ってくれていた母は実の親じゃないって、旅先でカミングアウトされるって、なかなかのものよ・・・案外すんなりと話をすすめる安澄の適応力がすごいと思った。
旅の無理がたたってか、病状は悪化し、旅先で倒れてしまう双葉。
緩和ケアの病院に入り、あとはただただ療養するのみとなってしまった。
双葉の最後のやりたいことは『生みの親に会う』ことだった。
夫の捜索依頼をしたシングルファザー探偵に、ついでのお願いをしていた。
双葉の母は60代で生きていたが、自分を捨てて新しく出会った男と結婚していて、その子家族と世田谷の良いお家に同居していた。
双葉の最後の願いをかなえようとする探偵だったが、向こうに「そんな娘はいない」と一蹴されてしまった。
そりゃ、せっかく成功した生活を手に入れたのに今さら壊されたくはないよなあ・・・まあクズなことに変わりはない。
夫は、ピラミッドを見にエジプトに行きたかった言っていた双葉の願いをかなえるため、今できる限りのことをした。
今までの登場人物みんなで人間ピラミッドをつくり双葉に披露した・・・なにそれ!
めっちゃ謝ってたけど、時すでに遅しですよ。
もともとお前のせいだろ!
闘病の末息を引き取った双葉。
安澄がお見舞いにきて、もう意識も朦朧として応答ができない状態の双葉に話しかけるシーンはもう泣いちゃうよね。
皆に愛情を与えてくれただけの母親で、何も悪いことしてないのにね。
双葉の遺体は極秘で銭湯で燃やされ、沸かしたお湯にみんなで浸かって、あったかいね、で終わるんだけど、これが最高に理解できなかったですね。
なぜかED曲も激しめ。
煙突から出てくる煙が赤かったのちょっと不気味でした。
泣けるとこは泣けるけど、感動作かといわれると微妙なとこ。
★★★☆☆